不動産を購入する際、多くの人が物件価格に注目しますが、実際には物件価格以外にも多くの「諸費用」が発生します。

これらの諸費用を事前に把握しておかないと、「思ったよりも費用がかかった」「手元資金が不足してしまった」といったトラブルに繋がる可能性があります。

不動産の購入にかかる諸費用には、契約時、住宅ローン借入時、登記手続き時、入居後といったタイミングで発生するものがあり、それぞれの内容を理解し、適切な資金計画を立てることが重要です。

この記事を読めば、住宅購入時の費用に対する理解が深まり、安心してマイホーム購入を進めることができるでしょう。

1. 不動産購入にかかる諸費用の全体像

1-1. 不動産購入時の諸費用とは?

不動産を購入する際には、物件価格のほかにさまざまな「諸費用」が発生します。これらは契約時、住宅ローンの借入時、登記手続き時、入居後といった各段階で必要となるため、購入計画を立てる際には、物件価格だけでなく諸費用も考慮することが重要です。

不動産購入は人生の中でも最も大きな支出のひとつです。しかし、多くの人が「物件価格」ばかりに注目し、「諸費用」を軽視しがちです。

実際には、諸費用だけで物件価格の5%~10%ほどかかることもあります。例えば、3,000万円の住宅を購入する場合、諸費用は150万円〜300万円にもなることがあります。

これを事前に把握していないと、「資金が足りない」「住宅ローンの借入額を増やさなければならない」といったトラブルに繋がる可能性があります。

不動産購入の諸費用には、大きく分けて以下のようなものがあります。

売買契約時の諸費用(仲介手数料、印紙税、手付金 など)

住宅ローン借入時の諸費用(ローン保証料、事務手数料、団体信用生命保険料 など)

登記手続きにかかる諸費用(登録免許税、司法書士報酬 など)

入居後にかかる諸費用(不動産取得税、固定資産税、修繕積立金 など)

例えば、3,500万円の中古マンションを購入する場合、諸費用は以下のようになります。

項目費用(概算)
仲介手数料約118万円
印紙税1万円
登録免許税約10万円
住宅ローン保証料約60万円
火災保険・地震保険料約15万円
修繕積立基金(マンションの場合)約20万円
合計約224万円

このように、物件価格とは別に数百万円単位の費用がかかるため、しっかりと準備しておくことが重要です。

不動産購入時の諸費用は多岐にわたり、物件価格の5〜10%程度に及ぶことがあります。事前に正しく把握し、必要な資金を準備することで、安心して住宅購入を進めることができます。

1-2. 諸費用の総額はどのくらい?(目安とケース別試算)

不動産購入の諸費用は、購入する物件の種類や価格、住宅ローンの利用有無によって大きく異なります。新築と中古、マンションと一戸建ての違いによっても変動するため、それぞれのケースごとの試算が必要です。

諸費用の総額は、物件の条件や契約内容によって変わるため、「一律○○万円」とは言い切れません。

例えば、新築の場合は「仲介手数料が不要」になるケースがある一方で、「修繕積立基金」などが発生する場合があります。また、住宅ローンを利用するかどうかによっても、大きく費用が変わります。

以下に、新築・中古、マンション・一戸建てのパターンごとの諸費用の目安を示します。

住宅種別物件価格諸費用の目安(割合)諸費用の概算
新築マンション4,000万円3%〜6%120万〜240万円
新築一戸建て3,500万円5%〜8%175万〜280万円
中古マンション3,000万円6%〜10%180万〜300万円
中古一戸建て2,500万円7%〜12%175万〜300万円

このように、物件の種類や価格によって諸費用の割合が異なることが分かります。特に、中古物件のほうが諸費用が高くなる傾向があります。これは、中古物件では「仲介手数料」「修繕積立基金」「住宅ローン保証料」などの費用が発生することが多いためです。

不動産購入の諸費用は、新築か中古か、マンションか一戸建てかによって異なります。物件価格の5%〜10%程度が諸費用として必要になるため、事前に十分な資金計画を立てることが重要です。

1-3. 新築・中古、マンション・一戸建てでの違い

新築・中古、マンション・一戸建てでは、諸費用の発生項目や金額に違いがあります。特に「仲介手数料」「修繕積立基金」「リフォーム費用」などの有無が、総額に大きな影響を与えます。

新築物件の場合、仲介手数料が不要になるケースが多いですが、その分「修繕積立基金」や「オプション工事費」などの費用がかかることがあります。一方、中古物件では仲介手数料が発生するうえ、入居前にリフォームが必要になることもあります。

また、マンションの場合は「管理費」「修繕積立金」が毎月発生しますが、一戸建ての場合はこれらの費用が不要な代わりに、自分でメンテナンス費用を積み立てる必要があります。

例えば、新築マンションと中古マンションを比較すると、以下のような費用の違いがあります。

項目新築マンション中古マンション
仲介手数料なしあり(物件価格の3%+6万円)
修繕積立基金あり(10万〜50万円)なし
リフォーム費用なしあり(50万〜200万円)

新築・中古、マンション・一戸建ての違いによって、諸費用の総額は大きく変わります。自分のライフスタイルや資金計画に合った選択をすることが重要です。

2. 売買契約時に発生する諸費用

不動産を購入する際、最初に発生する諸費用が「売買契約時の諸費用」です。契約書を交わし、売買を正式に決定するタイミングで必要となるため、事前にしっかり準備しておくことが重要です。主な項目として、「仲介手数料」「印紙税」「手付金」などがあります。それぞれの詳細や、費用を抑える方法について解説します。

2-1. 仲介手数料の計算方法と節約のポイント

仲介手数料は、不動産会社に支払う報酬であり、売買価格に応じた上限額が法律で定められています。ただし、手数料を抑える方法も存在するため、事前に知識を持っておくことで無駄な出費を避けることが可能です。

不動産売買は専門知識を必要とする取引であり、多くの人が不動産会社を介して物件を購入します。その際、不動産会社は売主と買主の間に立ち、物件情報の提供、契約手続き、交渉、ローンのサポートなどを行います。その対価として支払うのが「仲介手数料」です。

仲介手数料の計算方法は、国土交通省によって以下のように定められています。

売買価格仲介手数料(上限額)
200万円以下の部分取引額の5% + 消費税
200万円超~400万円以下の部分取引額の4% + 消費税
400万円超の部分取引額の3% + 6万円 + 消費税

例えば、3,000万円の物件を購入する場合、以下の計算になります。

(3,000万円 × 3%)+ 6万円 + 消費税(10%) = 約105万円

このように、仲介手数料は高額になるため、できるだけ節約する方法を知っておくことが重要です。

仲介手数料を抑えるための方法として、以下のような選択肢があります。

仲介手数料無料の不動産会社を利用する

一部の不動産会社では、売主からのみ手数料を受け取る「買主手数料無料」のサービスを提供しています。

例えば、新築マンションの販売会社などがこれに該当します。

直接売主から物件を購入する

一部の新築物件や、売主が不動産会社であるケースでは、仲介手数料が不要になります。

手数料割引キャンペーンを活用する

仲介手数料を割引する不動産会社も存在するため、複数の会社を比較検討するのがおすすめです。

仲介手数料は、不動産取引における大きな負担の一つですが、無料または割引制度を活用することで節約が可能です。購入前に複数の不動産会社を比較し、自分に合った選択をすることが大切です。

2-2. 印紙税の適用範囲と節税対策

印紙税は、不動産売買契約書に貼付する税金であり、売買金額に応じて課税されます。ただし、特定の条件を満たすことで軽減措置を受けられるため、事前に確認しておくことが重要です。

印紙税は、契約書を作成する際に課される税金で、契約書に貼り付けた印紙をもって納税とみなされます。不動産売買契約は法律上、書面での契約が必須となるため、必ずこの税金が発生します。

印紙税額は、契約書に記載された売買価格に応じて以下のように決められています。

売買価格印紙税額(通常税率)軽減税率(令和9年3月31日まで)
1,000万円超~5,000万円以下2万円1万円
5,000万円超~1億円以下6万円3万円
1億円超~5億円以下10万円6万円

例えば、4,500万円の物件を購入する場合、本来は2万円の印紙税がかかりますが、軽減税率が適用されることで1万円になります。

印紙税を節約する方法として、以下のような対策があります。

1.電子契約を活用する

  • 電子契約で締結すれば、印紙税が発生しません。
  • ただし、対応している不動産会社が限られるため、事前に確認が必要です。

2.軽減措置を利用する

  • 令和9年3月31日までの契約に適用される軽減税率を活用することで、通常より安く抑えることが可能です。

印紙税は契約書を作成する際に発生する税金ですが、軽減措置や電子契約の活用で節約できます。購入時には適用条件を確認し、できるだけ負担を軽減しましょう。

3. 住宅ローン借入時にかかる諸費用

住宅を購入する際、多くの人が住宅ローンを利用します。しかし、住宅ローンの借入時には、さまざまな諸費用が発生することを知っておく必要があります。代表的なものとして、「ローン保証料」「事務手数料」「火災保険料」「団体信用生命保険料」などがあり、これらの費用を正しく理解し、できるだけ節約することが重要です。

3-1. ローン保証料とは?支払い方法と節約方法

ローン保証料は、金融機関から住宅ローンを借りる際に発生する費用の一つで、借入額や返済期間によって金額が異なります。保証料が無料のローンもあるため、選択肢を比較することが重要です。

住宅ローンを借りる際、金融機関は借主の返済能力を審査しますが、それでも万が一返済が滞った場合に備え、保証会社に保証を依頼するのが一般的です。そのため、借主は金融機関ではなく保証会社に「保証料」を支払う必要があります。

保証料の支払い方法は以下の2種類があります。

1.一括前払い方式:借入時にまとめて支払う(例:1,000万円あたり20万円程度)

2.金利上乗せ方式:保証料を支払わず、代わりに金利を0.2%程度上乗せする

例えば、3,000万円の住宅ローンを35年間で借りる場合、保証料は以下のようになります。

返済方式保証料の総額(概算)
一括前払い約60万円
金利上乗せ0.2%上乗せ(毎月の返済額に反映)

保証料を節約するには、以下の方法があります。

1.保証料無料の住宅ローンを選ぶ

  • ネット銀行など、一部の金融機関では保証料が不要な商品を提供しています。

2.金利上乗せ方式を選び、手元資金を確保する

  • 一括で支払うと手元資金が減るため、金利上乗せ方式を選ぶことで資金を他に回せます。

住宅ローンの保証料は、借入額や返済方法によって異なりますが、無料の金融機関を選ぶことで節約可能です。借入時には複数の選択肢を比較し、最適なプランを選ぶことが大切です。

3-2. 住宅ローンの事務手数料の種類と相場

住宅ローンの事務手数料は金融機関に支払う手続き費用であり、「定額型」と「定率型」の2種類があります。借入額や返済計画に応じて、どちらの手数料が有利かを判断することが重要です。

金融機関が住宅ローンを提供する際には、契約手続きや審査、書類作成などの業務が発生します。そのため、借主は事務手数料を支払う必要があります。

事務手数料には以下の2種類があります。

1.定額型(例:3万円〜5万円)

  • 事務手数料が固定されており、借入額に関係なく一定額を支払う。
  • 主にメガバンクや一部の地方銀行で採用されている。

2.定率型(借入額の2.2%など)

  • 借入額に応じて手数料が変動する。
  • 例:3,000万円の借入なら、事務手数料は66万円(2.2%の場合)

例えば、3,000万円の住宅ローンを利用する場合の事務手数料の違いは以下のようになります。

方式事務手数料(概算)
定額型3万円
定率型(2.2%)66万円

節約のポイント

  ・少額のローンなら定額型が有利(借入額が少ないほど節約可能)

  ・高額のローンなら定率型が有利な場合もある(銀行の金利が低ければメリットあり)

住宅ローンの事務手数料は金融機関によって異なります。借入額や金利条件を比較し、コストを抑える方法を検討することが大切です。

3-3. 火災保険・地震保険の加入義務と選び方

住宅ローンを利用する場合、火災保険への加入が必須となるケースが多く、地震保険は任意ですがリスク管理として検討すべきです。保険会社によって保険料が異なるため、比較検討が重要です。

住宅ローンの融資を受ける際、金融機関は物件を担保に取るため、万が一の火災リスクに備え、火災保険の加入を義務付けることが一般的です。

また、日本は地震が多い国であり、火災保険だけでは地震による損害がカバーされません。そのため、地震保険を追加で契約することで、災害時のリスクに備えることができます。

例えば、東京都内の一戸建て(建築費3,000万円)の場合、以下のような火災・地震保険の費用が発生します。

保険種別保険料(年間)
火災保険(10年間契約)約15万円
地震保険(5年間契約)約5万円

節約のポイント

  • 複数の保険会社を比較する(同じ補償内容でも料金が異なる)
  • 長期契約で割引を受ける(5年契約・10年契約で割安になる)
  • 不要な特約を外す(水害特約など、不要な補償を見直す)

火災保険・地震保険は、住宅ローンを利用する際に重要なポイントです。保険料を抑えながら、適切な補償を選ぶことが大切です。

4. 登記手続きにかかる諸費用

不動産を購入すると、所有権を正式に移転するために「登記」が必要になります。登記手続きを行う際には、「登録免許税」や「司法書士報酬」といった費用が発生します。これらの費用は法律で定められており、軽減措置が適用される場合もあります。本章では、登記に関する諸費用の内訳や節約のポイントについて詳しく解説します。

4-1. 登録免許税の計算方法と軽減措置

登録免許税は、不動産の権利を公的に証明するためにかかる税金で、購入する物件の種類や条件によって税率が異なります。ただし、一定の条件を満たすと軽減措置が適用され、負担を減らすことが可能です。

不動産の登記には、主に以下の3つの種類があります。

  1. 所有権保存登記(新築住宅を購入した場合)
  2. 所有権移転登記(中古住宅を購入した場合)
  3. 抵当権設定登記(住宅ローンを利用する場合)

登録免許税は、登記の種類ごとに異なる税率が適用され、固定資産税評価額に基づいて計算されます。

登録免許税の税率は以下のようになっています。

登記の種類一般税率軽減税率(適用条件あり)
所有権保存登記0.4%0.15%
所有権移転登記2.0%0.3%(一定の要件を満たす住宅)
抵当権設定登記0.4%0.1%(住宅ローン利用時)

例えば、3,000万円の新築住宅を購入する場合、固定資産税評価額が2,000万円だったとすると、通常の税率では以下のようになります。

  • 所有権保存登記(2,000万円 × 0.4%)= 8万円
  • 抵当権設定登記(2,000万円 × 0.4%)= 8万円

しかし、軽減措置が適用されると、以下のように負担を軽減できます。

  • 所有権保存登記(2,000万円 × 0.15%)= 3万円
  • 抵当権設定登記(2,000万円 × 0.1%)= 2万円

つまり、軽減措置を活用することで、合計11万円の節約が可能になります。

軽減措置の適用条件

  • 新築住宅の場合:床面積が50㎡以上の住宅
  • 中古住宅の場合:築年数や耐震基準を満たしている住宅
  • 住宅ローンを利用する場合:金融機関の担保設定があること

登録免許税は、登記手続きにおいて必ず発生する費用ですが、軽減措置を適用することで大幅に節約できます。購入前に税率や控除の条件を確認し、不要な支払いを避けるようにしましょう。

4-2. 司法書士報酬の相場と安くする方法

登記手続きは司法書士に依頼するのが一般的であり、その報酬も諸費用の一部となります。司法書士報酬は事務所によって異なりますが、比較検討や交渉次第で費用を抑えることができます。

不動産登記は法律に基づいた複雑な手続きが必要なため、ほとんどの人が司法書士に依頼します。司法書士報酬は自由設定のため、依頼する事務所によって価格に差があり、相場を把握しておくことが重要です。

司法書士報酬の一般的な相場は以下のとおりです。

登記の種類司法書士報酬の相場
所有権保存登記3万円〜5万円
所有権移転登記5万円〜10万円
抵当権設定登記3万円〜5万円

例えば、新築マンションを購入し、住宅ローンを組む場合、司法書士報酬の合計は以下のようになります。

  • 所有権保存登記:4万円
  • 抵当権設定登記:4万円
  • その他手続き費用:2万円
  • 合計:10万円

司法書士報酬を抑えるための方法として、以下の対策が考えられます。

1.複数の司法書士事務所から見積もりを取る

  • 司法書士の報酬は自由価格のため、事務所によって費用が異なります。
  • 2〜3社から見積もりを取り、適正価格を確認しましょう。

2.金融機関提携の司法書士を利用する

  • 住宅ローンを利用する場合、金融機関が提携している司法書士に依頼すると割引が適用されることがあります。

3.登記手続きを自分で行う(難易度高)

  • 法律の知識がある人は、自分で登記を行うことで司法書士報酬を節約できます。
  • ただし、書類の不備があると手続きが遅れるため、慎重に進める必要があります。

司法書士報酬は、事務所ごとに料金が異なるため、複数の見積もりを取ることでコストを抑えることが可能です。また、金融機関の提携司法書士を活用することで、より安く依頼できる場合もあるため、慎重に比較検討しましょう。

5. 入居後に発生する諸費用

不動産を購入し、入居した後もさまざまな費用が発生します。特に注意すべきなのが、「不動産取得税」「固定資産税・都市計画税」「修繕積立金(マンションの場合)」といったランニングコストです。これらの費用を見落としていると、予想外の出費に驚くことになります。本章では、入居後に発生する諸費用の詳細や、節約のポイントについて詳しく解説します。

5-1. 不動産取得税の支払い時期と軽減措置

不動産取得税は、不動産を購入した後に一度だけ支払う税金であり、購入後半年から1年以内に納税通知書が届きます。ただし、一定の条件を満たせば軽減措置が適用され、負担を減らすことが可能です。

不動産取得税は、都道府県が課税する税金であり、土地や建物を購入した際に課されます。この税金は購入後に1回だけ支払うものですが、支払いのタイミングを把握していないと、「突然の出費」となり、家計に負担をかけることになります。

不動産取得税の計算方法は以下のとおりです。

  • 課税標準額 × 税率(3%または4%) = 不動産取得税額

課税標準額は、購入価格ではなく固定資産税評価額を基準に決まるため、市場価格よりも低めに設定されることが多いです。

例えば、固定資産税評価額が2,000万円の住宅を購入した場合、不動産取得税の計算は以下のようになります。

  • 土地(軽減措置適用後):評価額2,000万円 ×1/2× 3% = 30万円(令和9年3月31日まで評価額の1/2)
  • 建物(新築住宅の場合):評価額2,000万円 × 3% = 60万円

ただし、新築住宅の場合、一定の条件を満たせば軽減措置が適用され、税額が減額されます。

軽減措置の適用条件

  • 新築住宅の場合:課税標準額から1,200万円が控除される
  • 中古住宅の場合:築年数や耐震基準を満たしている場合に軽減措置が適用される

軽減措置を適用すると、例えば新築住宅の建物評価額が2,000万円だった場合、1,200万円が控除され、残り800万円に対して3%の税率が適用されるため、24万円に減額されます。

不動産取得税は、購入後に一度だけ支払う税金ですが、軽減措置を利用すれば負担を大幅に減らすことが可能です。購入前に自分の物件が軽減措置の対象になるかを確認し、適用手続きを忘れずに行いましょう。

5-2. 固定資産税・都市計画税の支払い方法

固定資産税と都市計画税は、毎年支払う必要がある税金であり、不動産を所有している限り続きます。支払い方法や軽減措置を活用し、計画的に支払うことが重要です。

固定資産税は、市町村が課税する税金で、所有する不動産の価値に応じて課されます。また、都市計画区域内にある物件には「都市計画税」も追加でかかります。

固定資産税の計算方法

  • 固定資産税 = 固定資産税評価額 × 1.4%

都市計画税の計算方法

  • 都市計画税 = 固定資産税評価額 × 0.3%(上限)

例えば、固定資産税評価額が2,500万円の住宅の場合、税額は以下のようになります。

  • 固定資産税:2,500万円 × 1.4% = 35万円
  • 都市計画税:2,500万円 × 0.3% = 7.5万円

合計すると、年間42.5万円の税金を支払う必要があります。

(節約のポイント)

1.新築住宅の軽減措置を活用する

  ・新築住宅は3年間、固定資産税が1/2に軽減(長期優良住宅なら5年間)

2.土地の軽減措置を利用する

  ・住宅用地の場合、固定資産税の課税標準額が1/6に減額される

3.口座振替割引を利用する

  ・一部の自治体では、口座振替で支払うと割引が適用されることがある

固定資産税・都市計画税は毎年支払う必要がある税金ですが、軽減措置を活用すれば大幅に負担を減らすことが可能です。事前に適用条件を確認し、無駄な税負担を避けるようにしましょう。

5-3. 修繕積立金の必要性と費用の推移(マンションの場合)

マンションを購入すると、毎月「修繕積立金」を支払う必要があります。これは、将来的な大規模修繕に備えるためのもので、築年数が経過するほど金額が上がる傾向にあります。

マンションは共用部分(外壁・エレベーター・屋上防水など)の修繕が必要になるため、毎月一定額の「修繕積立金」を積み立てる仕組みになっています。

一般的な修繕積立金の目安は以下のとおりです。

築年数修繕積立金(月額)
〜10年5,000円〜8,000円
10〜20年8,000円〜15,000円
20年以上15,000円〜30,000円

特に築20年を超えると、修繕積立金が大幅に上昇することが多いため、購入時に管理組合の積立金状況を確認することが重要です。

マンションの修繕積立金は、築年数が経過するにつれて増額されるケースが多いため、購入前に将来的な負担額を確認し、無理のない資金計画を立てましょう。

6. 諸費用が現金で用意できないときは?

不動産を購入する際、本体価格とは別にさまざまな諸費用が発生します。しかし、これらの諸費用をすべて現金で用意するのが難しい場合もあります。そのようなときに利用できる方法として、「諸費用ローン」「住宅ローンの借入額を増やす」「金融機関の支援制度を活用する」といった選択肢があります。本章では、諸費用が用意できないときの具体的な対処法と、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説します。

6-1. 住宅ローンに諸費用を組み込む方法とその影響

住宅ローンの一部として諸費用を借り入れることで、自己資金の負担を軽減できます。ただし、借入額が増えることで毎月の返済額や総返済額が増えるため、慎重に検討する必要があります。

多くの金融機関では、住宅ローンの借入額を物件価格の80%〜100%までに制限しています。しかし、一部の銀行では「諸費用込みローン」や「100%以上の借入れが可能な住宅ローン」を提供しており、これを利用すれば諸費用分もローンに組み込むことが可能です。

しかし、諸費用を含めた借入れを行うと、その分借入総額が増え、利息の負担が大きくなるというデメリットもあります。例えば、3,000万円の住宅ローンに加えて200万円の諸費用ローンを組むと、総返済額は大きく変わります。

借入額返済期間金利(固定1.5%)総返済額(概算)
3,000万円35年1.5%約3,858万円
3,200万円(諸費用含む)35年1.5%約4,115万円

上記の例では、諸費用を含めることで約257万円の追加負担が発生することになります。

諸費用を住宅ローンに組み込むことで、手元資金の負担を軽減できますが、総返済額が増えるリスクもあります。借入額を増やす際には、金利や返済計画を十分に検討しましょう。

6-2. 諸費用ローンを利用するメリットと注意点

諸費用ローンは、住宅ローンとは別に諸費用専用のローンを組む方法です。無理に住宅ローンの借入額を増やさずに済むメリットがありますが、金利が高くなることが多いため、慎重に選ぶ必要があります。

諸費用ローンは、住宅ローンと異なり無担保で借り入れができるため、審査が比較的スムーズです。しかし、一般的に金利が高めに設定されており、住宅ローンの金利(1%前後)に比べて3%〜5%程度の金利が適用されることが多いです。

例えば、200万円の諸費用ローンを5年間の返済期間で組んだ場合の比較を見てみましょう。

金利月々の返済額総返済額
3.0%約35,900円約215万円
5.0%約37,800円約227万円

このように、金利が上がると総返済額も増えるため、金利の低い金融機関を選ぶことが重要です。

諸費用ローンは手軽に利用できる反面、金利が高くなる傾向があります。返済計画をしっかり立てたうえで、無理のない範囲で借り入れることが大切です。

6-3. クレジットカードや消費者金融を利用するリスク

諸費用をクレジットカード払いや消費者金融のローンで補う方法もありますが、金利が非常に高くなるため、慎重に判断する必要があります。

クレジットカードのキャッシング枠や消費者金融のローンは、諸費用の支払いに利用できる場合がありますが、金利が年15%〜18%と高額になることが一般的です。このため、住宅ローンや諸費用ローンに比べて返済負担が非常に重くなります。

例えば、200万円を年15%の金利で5年間借りた場合の支払い総額は以下のようになります。

金利月々の返済額総返済額
15.0%約47,500円約285万円
18.0%約50,800円約305万円

このように、金利の高さによって返済総額が膨れ上がるため、慎重に判断する必要があります。

クレジットカード払いや消費者金融のローンは、利便性が高いものの金利負担が大きくなりやすいため、極力避けるべきです。やむを得ない場合は、短期間での返済計画を立てることが重要です。

6-4. 低金利の金融機関や支援制度を活用する

金融機関によっては、低金利の諸費用ローンを提供している場合があり、また、自治体による住宅購入支援制度を活用することで負担を軽減できる場合があります。

一部の銀行では、住宅ローン契約者向けに低金利の諸費用ローンを提供しており、一般的な消費者金融よりも金利を抑えられます。また、自治体によっては、住宅購入時の補助金や融資制度を用意している場合があります。

銀行の諸費用ローン(例:金利1.5%〜3%)

自治体の住宅購入補助金(例:最大50万円の補助)

金融機関の低金利ローンや自治体の支援制度を活用することで、諸費用の負担を抑えることが可能です。住宅購入前に利用可能な制度を確認し、適用を受けるようにしましょう。

投稿者プロフィール

齊藤 起久康
齊藤 起久康
有限会社ひかり不動産 代表取締役
宅地建物取引士 二級建築士

埼玉県美里町に生まれ育ち
1987年~1990年:住宅建築・不動産会社勤務
1990年~:有限会社ひかり不動産
2000年~現在:有限会社ひかり不動産 代表取締役

不動産・住宅建築業界一筋で業界歴35年超のベテラン
長年の経験と今まで培ってきた事 そして、こだわりのある
「自然素材の家づくり」について皆様にお伝えします